①定款認証

ア 基本事項の決定

法人を設立しようと思ったら、まずは定款を作る必要があります。定款には次の事項を記載します。

 ㋐商号(会社名)

 ㋑出資者(発起人)

 ㋒取締役

 ㋓取締役の任期

 ㋔本店所在地

 ㋕事業の目的

 ㋖資本金

 ㋗公告の方法

 ㋘決算日

この中で不動産業の場合に特に注意したいのが、本店所在地、事業の目的と決算日です。

まずは本店所在地です。不動産業の場合には、宅建業法で定められた要件を満たした事務所でなければ事務所として認められないという制約があります。

自宅やコワーキングスペースを事務所として設置したいと思ってもそれは宅建業法で定められた要件を満たしていないという事になりますので、注意が必要です。

次に事業の目的。これからやろうと思っている事業の内容を目的に織り込まなければなりません。あとからあれもやりたかった。これもしたかったというのでは、その都度目的を変更しなければならず、そのたびに定款を変更しなければいけませんので、そのたびにお金がかかります。会社を作ると決めたときにやろうと思っていることはすべて目的に含めて定款を作成するようにしてください。しかし、書きすぎには要注意です。

あまりに目的が多すぎると、結局何が目的の会社なのかわからないため、取引先からの信用を得ることができなかったり、融資を受けられない可能性が大きくなります。

最後に決算日です。決算日については、特に何月にしなければならないというきまりはありません。しかし、決算日から2か月後に法人税などの税務書類の提出をしますので、決算日を含む二か月間は繁忙期を避けた方がいいでしょう。

決算書類作成にあたっての書類を探す時間や、質問に回答したりなど、通常業務とは別に時間を取られることが多いからです。

イ 会社の実印の作成

 時代の変化に伴って印鑑は省略傾向にありますが、法人設立時には印鑑登録が必要になります。印鑑登録は法人の本店所在地の法務局で、設立登記申請と同じタイミングで行います。印鑑登録の際には、代表者個人の実印と印鑑証明も必要になります。市区町村で登録している個人の印鑑証明書を登記申請の前に取得してから、①会社代表印②個人の実印③印鑑証明書を持って設立登記申請に行きます。

定款の作成が終わり、登記申請に行く時までに会社代表印を作る必要があります。

インターネットで簡単に作ることが出来ますが、印鑑なので作成に時間がかかることが多いです。実際に、登記申請に行く時までに印鑑が届かなかったという事がないように、早めに注文して作成しておくことをおすすめします。

会社代表印と一緒によく売られているのが、銀行印と角印です。銀行印は口座開設の際に、角印は領収書や請求書など対外的な社印として使われます。今では請求書や領収書も紙で送るという事が少なくなってきていますので、会社代表印だけ作っておけば充分です。

ウ 電子定款の作成・電子認証

 アで作った定款を原始定款といいます。この原始定款のままでは効力をもちません。公証人役場で公証人に正式な定款として認めてもらうことではじめて効力をもつことになります。公証人役場で公証人が定款を認めることを認証といいます。認証は従来通り原始定款に捺印をして公証人役場に持っていく方法と原始定款に電子で署名をしたあとに電子で送信をし電子データを公証人が確認し認証するという方法の2通りあります。電子認証の場合には印紙代の4万円が不要となります。

②登記申請

 電子定款の作成・認証が終わったら、次は登記申請です。登記申請に必要な書類は以下の通りです。

ア 登記申請書

イ 登録免許税納付用台紙

ウ 定款

エ 就任承諾書

オ 代表社員、本店所在地及び資本金決定書

カ 印鑑証明書

キ 払い込み証明書

発起人の口座に資本金を払い込みます。この資本金を払い込む時期は定款作成後から定款認証までの期間に行います。資本金を払い込まないと登記申請の際に必要な資本金の払込証明書を発行できません。

以上の書類は様式が決まっていて、記載事項に不備があると補正(訂正)になってしまいますので、法務局が出しているフォームを使うか、もしくは開業freeeを使うとスムーズに登記申請書類を作ることが出来ます。

これらの書類を本店所在地の法務局に持っていくか、もしくは郵送またはオンラインで申請します。内容に不備がなければ、申請から1週間くらいで登記が完了となります。

会社設立日は法務局が申請を受け付けた日になりますので、設立日にこだわりたいという場合には余裕を持って書類の作成、申請をする必要があります。