不動産業を始めるにあたって個人事業者で事業を始めるのか、法人を設立して事業を始めるのかは大きな違いがあります。不動産業を始めるのであれば法人を設立の方をお薦めします。その主な理由が以下のとおりです。
①個人に対してのリスクを回避できる
会社を設立して宅建業を行うと、財産区分を明確にできます。財産区分を明確にすれば損害賠償責任などが個人資産に及ぶというリスクを回避することが出来ます。
不動産取引は金額が大きいので、宅建業を営む個人事業主に損害賠償や借金が発生した場合にはその支払い範囲が広く、個人財産も支払いにあてなければいけないということにもなります。しかし、法人であれば社長が借金の連帯保証人になっていない限り、会社を倒産させてしまえば支払い義務が社長個人の財産にまで及ぶことはありません。
②社会的信用度が大きい

法人を設立して不動産業を始める2つ目のメリットが社会的信用です。個人事業主と比べて社会的信用度が高いのが法人です。なぜなら不動産取引は金額が大きいため、個人事業主としての取引では顧客を不安にさせてしまうことがあります。その点、法人はある程度の社会的信用が担保されているので顧客イメージや信用度が上がり取引がしやすくなります。金融機関に対しても同じことが言えます。法人であれば金融機関との取引がスムーズにできることも多いですが、個人事業主では、そこが上手くいかない場合があります。
法人の方が社会的な信用度が上がる分、従業員の確保がしやすくなるというメリットもあります。
③節税対策をしやすい
個人で不動産業をやっている場合には、節税対策はほとんどありません。しかし法人であれば、
①給与所得控除が使える
②退職金を必要経費にすることが出来る
③経営者の生命保険を必要経費にすることができる
④個人では3年間しか繰り越せない赤字を法人では10年間繰り越しすることができる
⑤退職金を出すことができる
というメリットがあります。
これに対して、法人で不動産業を始めるデメリットもあります。
①設立に費用と時間がかかる
個人事業主であれば、税務署に開業届を出すだけで事業がはじめられます。これに対し、法人は設立に株式会社であればおおよそ30万円、合同会社であっても15万円ほどの設立費用がかかります。定款を作成したあとに、設立登記をしなければならないため、法人設立は早くて1か月はかかると考えておく必要があります。
②ランニングコストがかかる
個人事業主であれば所得にかかる税金以外に納める税金はありませんが、法人は法人を設立しただけで、つまりその法人があるという事だけで均等割という法人住民税が最低7万円かかります。これは赤字であってもかかる費用です。
その申告書を作成するために、税理士に頼む必要があります。法人税の申告書は個人の場合と違って、複数の書類を作らなければいけないためご自身で作成するにはかなりの知識と時間を必要とします。不動産にかかる取引については、税務にかかわる案件がしばしば発生するという事もありますので、ランニングコストはかかってしまいますが、税理士と契約することをお薦めします。
③社会保険料がかかる
法人を設立すると社会保険に加入する義務が発生します。社会保険料は毎月必ず発生する費用になり、支払いを待ってくれるという事もありません。お給料を決めるとお給料の金額によって自動的に決定する費用です。お給料の額面の15%くらいが会社の経費、残りの15%は自分で負担をして、合算の額面30%くらいを社会保険料として会社が年金事務所に納めることになります。
法人で不動産会社を設立すると以上のようなメリットデメリットはありますが、金額の大きい取引をする不動産会社であれば法人で事業を行うメリットの方が大きいといえます。