さて、ここでは飲食店営業許可に絞って取得の要件について触れていきます。

許可を取るための要件は大きく二つに分けられます。

1.人についての要件

人についての要件は2つあります。

ひとつめは、申請する人(お店の営業者)が欠格事由に該当しないこと。

ふたつめは、許可を取りたいお店に、専任の食品衛生責任者をおくことです。

まず、欠格事由について説明します。「欠格事由」とは、要するにこれに該当してしまうと許可が取れないということです。

具体的には、許可を申請する人が過去に食品衛生法に関して処分を受けたり、営業許可を取り消されて2年が経っていない場合は許可を取得することができません。

株式会社などの法人の場合には、役員の1人でもそのような事項にあてはまる場合には許可を取得できません。

次に、食品衛生責任者とは、食品を扱うお店で、食品の衛生管理を行う人のことです。お店の衛生環境が法令に適合するように管理します。

お店ごとに必ず一人専任の食品衛生責任者を置かなくてはならず、複数の店舗の食品衛生責任者を兼任することはできません。

他の飲食店から独立するようなケースで、「前のお店の食品衛生責任者になっている」なんていうときには、前のお店の食品衛生責任者は退任しなければなりませんので注意が必要です。

食品衛生責任者となるための一番ポピュラーな方法は、各都道府県に設置されている衛生協会が実施している合計6時間の講習を受けることです。講習を受ければ食品衛生責任者の資格を取得することができます。

なお、調理師や栄養士等の資格を持っていれば、講習を受けなくてもそれだけで食品衛生責任者になることができます。

また、仮に「満員で講習の予約が取れなくてオープンに間に合わない」といった場合、申請後一定期間以内に食品衛生責任者を設置することを約束する誓約書を、申請時に保健所へ提出することで、飲食店営業許可申請を受理してもらうことが可能ですので、オープンに間に合わない場合であっても許可を取得することができます。

申請後は、その誓約書どおりの期間内に食品衛生責任者を設置して、保健所へ報告しなければなりません。

2.お店の設備の要件

飲食店営業許可を取りたいお店の設備や構造については、法律で要件が定められています。この要件を満たしていれば営業許可を取得することができるのですが、細かい要件は保健所ごとに運用が異なり、その要件を全て満たしているかどうかは保健所の担当者が実際にお店に検査に来ます。

たいていどこの保健所でも似たような基準で運用されていますが、保健所ごとにローカルルールと呼ばれる独自の要件が定められていることがありますので、事前にしっかりと保健所に要件を確認しておくことが大切です。

チェックポイント:厨房の床が清掃しやすい構造になっていること

これは、厨房の床がコンクリートやタイル貼りなど、水はけが良い構造になっていることを指します。厨房の床にカーペットやじゅうたんなどが敷かれていると清掃しやすいと言えずNGです。

油などを多く扱うような営業形態だと、グリーストラップや排水溝を設置しないといけないこともあります。

チェックポイント:「厨房に2層シンクが設置されている」こと、

シンク1槽のサイズが「幅45cm×奥行き36cm×深さ18cm」以上であること

シンクのサイズについては、担当によっては基準に少し足りなくてもそれほど厳しく判断されないこともありますが、1cmでも足りないとシンクを交換するように言ってくる担当もいます。

また、保健所によっては食洗器を1槽とカウントして、その隣に1槽シンクを併設すればそれで2槽シンクが設置されていると認めてくれるというケースもあります。

次に紹介する手洗器もそうですが、水回りは、後から工事をすると費用がかさみがちなので、工事の段階で保健所にしっかりと事前確認しておくことが大事です。

チェックポイント:厨房内、トイレ内にそれぞれ「幅36cm×奥行き28cm」以上の大きさの手洗器が設置されていること

基本的に厨房内に従業員用として手洗器が一つ、トイレ内にお客さん用として手洗器が一つ設置されていなければなりません。

デザイン性の高いおしゃれな手洗器を設置したいような場合には、許可が取れるサイズか注意しなければなりません。多少小さくても認めてもらえる場合もありますので、基準に満たないサイズの手洗器を使いたいときには、事前に保健所に相談に行くと良いです。

保健所によっては厨房、トイレ内以外にも、客室に別にもう一つ手洗器を設置することを求められるところもあります。

チェックポイント:手洗器に設置されている消毒器が固定式であること

消毒器とは手洗い用の洗剤液が入った容器のことを指します。固定式でないといけないというのは、一般に市販されているボトル式のハンドソープなどをそのまま洗面台に置くだけではダメで、消毒器が壁もしくは洗面台に固定されていて動かせないような状態とする必要があるということです。

壁や洗面台の材質が高価な大理石であったり、構造的に固定式の消毒器をつけるための穴をあけることが難しいような場合には、受け皿を両面テープや接着剤で洗面台に固定して、その上に消毒器を置くことで認めてくれることもあります。

保健所によっては固定式でなくともOKというところもあるので、固定式を置きたくない場合などは相談してみるのもひとつの方法です。

チェックポイント:厨房と客室が扉等で区分されていること

この扉は大きなものである必要はなく、スイングドアやウェスタンドアを設置すれば問題ありません。

居抜き店舗の場合は、ウェスタンドアが動かないよう、開いた状態で針金などで固定されている場合や、そもそも取り外されてしまっていることがありますが、このような状態では許可はおりませんのでよく確認が必要です。

厨房内に冷蔵庫等の設備が収まっていること

基本的に、冷蔵庫や製氷機、食洗器、オーブンなどの厨房機器は、厨房内に収まっている必要があります。逆に言えば、客席など、厨房の外には食材や食器は原則として置けませんし、調理もしてはならないということです。

どうしても厨房内に冷蔵庫が置けない場合には、客室部分などに冷蔵庫や食器棚を置くことを認めてくれることもありますが、その場合でも、蓋がしっかりついていて、衛生状態を保ちやすいドリンクなどしかダメで、生肉、野菜などの食材を入れることは認められません。

また、ビールサーバーをカウンター上に設置している場合には注意が必要で、必ず注ぎ口のある方を厨房内に向けなければなりません。注ぎ口が客席側を向いていると、客室でビールを注ぐことになってしまうのでNGです。

チェックポイント:冷蔵庫に温度計が設置されていること

業務用の冷蔵庫であれば中の温度が外部からでも分かるように表示されているので問題ありません。

しかし家庭用の冷蔵庫を使うときには、外から庫内の温度が分かりませんので、隔測温度計を設置して外部から庫内の温度が分かるようにしておかなければなりません。インターネット通販などで1000円前後から購入可能です。

保健所によっては、庫内に温度計があればいいということもありますので、家庭用冷蔵庫を使用するときには保健所に確認を取ってみるといいです。

チェックポイント:厨房内に蓋付きのゴミ箱があること

厨房内に最低一つは必要です。蓋付きのものでなければいけません。

特に業務用のものでなくても、ホームセンターなどで売っているプラスチック製のものなどで構いません。

チェックポイント:食器棚に戸がついていること

食器をしまう棚には戸が必要です。いわゆる食器戸棚であればOKです。

戸はガラスでも木でも問題ありません。

保健所から飲食店営業許可を取る手続の流れは?

営業許可について「オープン予定日に合わせて手続きをしたい」という方は多いと思います。そこで飲食店営業許可を取るときの手続きの流れをご案内します。

まずは内装工事開始前に、店舗の概要を書いた図面等(物件を探すときに不動産屋さんからもらった図面にボールペンで書き込んだものでもOKです)を持って保健所の食品衛生課など(自治体によって名称は異なることがあります。)の担当窓口へ事前相談に行き、工事が完了する少し前に飲食店営業許可申請をして、工事完了のタイミングで保健所の担当にお店に検査に来てもらうというのが一般的な手続きの流れです。

内装工事が全部終わってから「ここがダメ」なんて指摘を受けて大掛かりな工事をしなきゃならない、なんてことにならないためにも、事前にしっかりと確認するのが大事です。

当法人に手続きをご依頼いただく場合にも、「お店の内装はこんな感じでいいの?」とご相談いただくことが多いので、まずは弊社にご相談ください。