昨今のコロナ禍で飲食店は危機に瀕していると言えるでしょう。

既存の飲食店経営者の方はもちろん、これから飲食店を開業しようと考えていた方も、

このコロナ禍が過ぎ去るのを今か今かと待ちわびているのではないでしょうか。

ここでは、実際に飲食店を開業するためには、どのような手続きや準備が必要か、

また開業後の管理業務についても一部ご紹介していきたいと思います。

飲食店を開業する時には、その店舗がどれほど小規模であれ、衛生上気をつけなければならない飲食物を提供する点から言っても、また数人または十数人の人が集まる場所だという点から言っても、保健所や消防署の許可を得ることが必要です。あるいは経営者としては自営である以上税務署への届け出も必要です。このように飲食店を開業する際は意外と多くの届け出が必要となります。そこでここでは、飲食店を開業する上で必要な届け出をすべて網羅してご紹介します。

早速、飲食店開業のために必要な届け出を順次ご紹介していきましょう。

・個人事業主の開業届出書。

個人事業主として飲食店を開業する場合、その年収の多少に関係なく、確定申告をすることが必要です。その確定申告をする上で絶対に必要な届け出が「個人事業の開廃業等届出書」です。

・飲食店営業許可

次に必要な届け出が「飲食店営業許可」です。これは人間が口にするものを扱う上で届けなければならないものです。

届け出る期間は店舗が完成する10日前までで、必要書類は、申請書、店内レイアウト図、食品衛生責任者の資格証明書、申請料です。届け出先は店舗の所在地の管轄の保健所です。

・防火管理者選任届

人間が多数集まるところで火災などが起こると大惨事になります。したがって火事が起こらないように細心の注意が必要です。そのための届け出が「防火管理者選任届」です。ただしこれは収容人数が30人を超える店舗のみです。

また火を使った調理を行わないカフェや、調理器具がIHの飲食店の場合は不要ですが、そうでなければ「火を使用する設備等の設置届」も必要です。この届出の基準は、1つのキッチンで利用する厨房機器の電気、ガスの入力の合計が350キロワット以上ある場合です。と言っても、自店舗の厨房機器がそれに該当するかどうかはなかなかわかりませんから、開業時に納入した厨房設備の業者に確認しましょう。

・労災保険、雇用保険の加入手続き

これは特に飲食店だから、という届け出ではありません。事業を経営して従業員を雇用するビジネスの場合が、すべで必要な届け出が、「労災保険の加入手続き」と「雇用保険の加入手続き」です。

まず従業員が正社員ではなくアルバイトであっても、労災保険の届け出は必ず必要です。また雇用保険の加入手続きは、その従業員が「1週間の労働時間が20時間以上あって」かつ「31日以上継続して雇用する」場合に必要です。どちらも雇用した日の翌日から10日以内に、労災保険の加入手続きは労働基準監督署に、雇用保険の加入手続きは公共職業安定所に届け出ましょう。

・お酒を提供する場合「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」

たとえば午後5時から午後11までの営業でお客様に酒類を提供する分には届け出は不要ですが、これが深夜12時以降も営業して、酒類を提供する場合には「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」が必要です。これは管轄の警察署に営業開始の10日前までに届け出ます。昼間に酒類を出すだけであれば届け出は不要です。

・その他営業の内容によって必要な届け出

店内で料理を提供するだけであれば不要ですが、たとえば製造したケーキやパンをテイクアウトで販売する場合は「菓子製造業許可」が必要です。

これは「届け出」ではなく、届けたうえで許可をもらうものですが、お酒を店内で提供するだけではなく、その酒類を店舗で販売する場合「酒類販売業免許」を取得することが必要です。この免許は、販売先や販売方法で細かく分類されていますが、「一般酒類小売業免許」の免許を取得すれば、あらゆる酒類の販売ができます。

この免許は「酒税法」という税金に関わる認可になるので届け出先は自店舗の所在地の管轄の税務署です。

またこの免許で注意すべき点は、自店舗でワインなどをボトルで提供し、飲み残した分を持ち帰ってもらうだけで、それは「酒類を販売した」ことに該当し、この免許が必要になるということです。この免許を取得しないで、ボトルの持ち帰りも含めて酒類を「販売」してしまうと、酒税法違反になり、1年以下の懲役または50万円以下の罰金という重い刑が待ち受けていますので、要注意です。

クラブやキャバクラのように接客サービスを行う飲食店は風俗営業居が必要です。接待とは、お客様の隣に座って相手をするだけではなく、たまたま従業員がカラオケのデュエット相手をするだけでも該当するので注意しましょう。また接待もカウンター越しであれば風俗営業許可は不要です。

飲食店を1店舗開業するだけでこれだけの手続きが必要になるのです。それだけ飲食業において、衛生管理と防災管理が重要であるということです。

どの届け出も、忘れると届け出るまで営業を停めなければなりませんから、飲食店を開業する際には漏れがないようにしましょう。